
建設業の注文書・注文請書とは:元請が下請に発注する書き方・法定記載・収入印紙【2026年版】
建設業の注文書・注文請書とは、注文書が発注者からの「申込」、注文請書が受注者からの「承諾」にあたり、両方がそろって請負契約が成立する一組の書類です。元請が下請へ工事を発注する場面では、この2枚が実務上の契約書として機能します。ただし建設業法は請負契約に一定の記載事項を書面で交付するよう義務づけており、注文書・請書だけで済ませると法定事項の抜けや後日のトラブルにつながりかねません。本記事では、注文書と注文請書の違い、建設業法19条の書面交付義務、記載事項、注文請書にかかる収入印紙(第2号文書)までを、一次ソースを示しながら整理します。
注文書(発注書)は、発注者が「この工事をこの内容・条件で頼みます」と示す申込の書面です。注文請書は、受注者が「その条件で請け負います」と応じる承諾の書面で、両者がそろうことで請負契約が成立します。建設工事では、独立した工事請負契約書を交わす代わりに、基本契約書と個別の注文書・請書を組み合わせる形で運用される場面が多くあります(出典: 国土交通省「建設業法第19条関係」建設業法令遵守ガイドライン)。
| 書類 | 出す人 | 法律上の位置づけ | 意味 |
|---|---|---|---|
| 注文書(発注書) | 発注者(元請など) | 申込の意思表示 | 「この工事をこの条件で頼む」 |
| 注文請書 | 受注者(下請など) | 承諾の意思表示 | 「その条件で請け負う」 |

注文書・注文請書とは:申込と承諾で契約が成立する
注文書と注文請書は、民法でいう「申込」と「承諾」の関係にあります。発注者が出す注文書が申込、受注者が返す注文請書が承諾にあたり、双方の意思表示がそろった時点で請負契約が成立します。つまり注文書を出しただけ、あるいは電話や口頭で発注しただけの状態では、合意の内容を客観的に示す書面が片方向にしか残らず、後で「言った・言わない」の争いになりやすくなります。
実務でありがちなのが、注文書は送ったものの注文請書が返ってこないまま工事が進むケースです。この状態では受注者が承諾した条件を書面で確認できず、工期や金額の食い違いが起きても証跡が弱くなります。元請が下請へ発注する場面では、注文書を送ったら必ず注文請書を受け取り、双方で保管する運用を徹底することが基本です。
独立した1通の工事請負契約書で結ぶ方法もあります。契約書そのものの書き方や建設業法上の法定記載事項は工事請負契約書の書き方で詳しく整理しています。

建設業法19条の書面交付義務と着工前の締結
建設工事の請負契約の当事者は、契約の締結に際して法定の事項を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付しなければなりません(出典: 建設業法第19条)。しかもこの書面の交付は、災害などやむを得ない場合を除き、原則として工事の着工前に行う必要があるとされています(出典: 国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン(元請負人と下請負人の関係に係る留意点)」)。
書面に記載すべき事項は、工事内容や請負代金の額、工事着手・完成の時期など計16項目が定められています(出典: 建設業法第19条第1項)。このうち「工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容」は、週休2日など建設業の働き方改革を背景に令和2年10月1日施行で追加された項目です。さらに令和6年12月13日施行の改正では、価格等の変動に基づく請負代金額・工事内容の変更の算定方法を定めること(第8号)が必須化されました(出典: 国土交通省「建設業法・入契法改正(令和6年法律第49号)について」)。所定の要件を満たせば、書面に代えて電子契約(電磁的措置)で締結することも認められています(出典: 建設業法第19条第3項)。
注文書・請書の形で契約する場合は、基本契約書に法第19条第1項各号の事項(個別の注文書・請書に記載する事項を除く)を記載して相互に交付し、個別の注文書・請書には第1項第1号から第3号までの事項その他必要な事項を記載する、という組み合わせが求められます(出典: 国土交通省「建設業法第19条関係」)。

注文書・注文請書の記載事項(チェックリスト)
個別の注文書・注文請書には、少なくとも建設業法19条1項の第1号から第3号にあたる「工事内容」「請負代金の額」「工事着手の時期および工事完成の時期」を記載し、残りの号は基本契約書側でカバーするのが実務の考え方です(出典: 国土交通省「建設業法第19条関係」)。ここが抜けると、工事範囲や納期をめぐるトラブルの原因になります。
| 記載欄 | 主に注文書・請書に書く事項 |
|---|---|
| 工事内容 | 工事名・場所・範囲・仕様(数量や図面の参照を含む) |
| 請負代金の額 | 税抜金額・消費税額・税込総額 |
| 工期 | 工事着手の時期と工事完成の時期 |
| 支払条件 | 支払の時期・方法(前金払や出来形払の定め) |
| 検査・引渡し | 完成確認の検査時期・方法と引渡しの時期 |
工務店HUBの帳票取込・移行支援で既存の発注帳票を棚卸ししてきた実務知見(YDAIコンサルティング株式会社・匿名集計)では、手書きやExcelの注文書で抜けやすい項目に次の傾向がありました。件数の多い順の傾向で、精密な割合を示すものではありません。
| 順位 | 手書き・Excelの注文書で欠けやすい項目 |
|---|---|
| 1 | 工事完成の時期(工期の終期)があいまい |
| 2 | 消費税額・税率の内訳が未記載 |
| 3 | 検査・引渡しの時期が未記載 |
| 4 | 支払の時期・方法(出来形払など)が未記載 |
| 5 | 受注者からの請書(承諾)が返らず片方向のまま |

注文請書にかかる収入印紙(第2号文書)
注文請書は、印紙税法上の「第2号文書(請負に関する契約書)」にあたり、契約金額に応じた収入印紙を貼る必要があります。国税庁も「工事注文請書」を第2号文書の例として示しています(出典: 国税庁「No.7102 請負に関する契約書」)。契約金額の記載がないものは200円、記載金額が1万円未満のものは非課税です。さらに建設工事の請負に係る契約書は、記載金額100万円超のものについて、令和9年3月31日までに作成される分に軽減措置が適用されます(出典: 国税庁「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」)。
| 契約金額(記載金額) | 注文請書に貼る印紙税額 |
|---|---|
| 1万円未満 | 非課税 |
| 1万円以上〜100万円以下 | 200円 |
| 100万円超〜200万円以下 | 200円(軽減後) |
| 200万円超〜300万円以下 | 500円(軽減後) |
| 300万円超〜500万円以下 | 1,000円(軽減後) |
| 500万円超〜1,000万円以下 | 5,000円(軽減後) |
| 1,000万円超〜5,000万円以下 | 10,000円(軽減後) |
なお印紙税は紙の課税文書に課されるため、電磁的措置による電子契約で作成した注文請書には収入印紙が不要と一般に整理されています(出典: 国土交通省「電磁的措置による建設工事の請負契約の締結に係るガイドライン」令和7年9月30日)。ただし電子化の可否は取引先との合意や社内体制もふまえて判断するもので、印紙代の削減だけを目的とすべきものではありません。消費税や適格請求書との関係を含む請求まわりの整理は建設業のインボイス対応も参考になります。

発注書類を仕組みで管理する(発注→検収→支払い)
注文書・注文請書の作成、印紙の要否、検収、支払いまでを紙やExcelでバラバラに管理すると、記載漏れや請書の回収漏れ、支払い漏れが起こりやすくなります。工事1件ごとに複数の外注へ発注する建設業では、件数が増えるほど手作業のチェックは破綻しがちです。発注から検収・支払いまでを同じ案件データでつなぐと、二重入力や転記ミスを抑えつつ、発注済み・請書回収済み・支払い済みといった状態を一覧で追えます。
たとえば、発注金額を実行予算と突き合わせれば、予算超過の発注に早い段階で気づけます。検収後の支払いを工事請求書の書き方で扱う請求・入金管理までつなげば、発注と支払いの整合も取りやすくなります。案件横断で管理を一本化する考え方は工務店の案件管理の方法で整理しています。
工務店HUBは、見積・実行予算・原価・発注・請求・入金・顧客管理・現場日報・写真・工程管理を1つの案件で一元管理できます。発注は案件データから作成でき、既存のExcel帳票を取り込めるため、慣れた注文書様式を活かしたまま発注から検収・支払いまでの抜け漏れを減らしやすくなります。
まとめ
建設業の注文書・注文請書は、注文書が申込、注文請書が承諾にあたり、両方がそろって請負契約が成立します。元請が下請へ発注する際は、注文書を送ったら必ず請書を回収し、双方で保管することが基本です。建設工事の請負契約は、着工前に法定の16項目を書面で相互に交付する義務があり(建設業法19条)、注文書・請書で運用する場合は基本契約書との組み合わせが求められます。注文請書は第2号文書として契約金額に応じた収入印紙が必要で、100万円超は令和9年3月31日まで軽減措置の対象です。これらの書類作成と検収・支払いを案件単位でつなぐ仕組みにすれば、記載漏れや支払い漏れを減らせます。
よくある質問
Q1. 工務店が下請へ発注するとき、注文書と注文請書はどちらも必要ですか?
注文書は発注者からの申込、注文請書は受注者からの承諾にあたり、両方がそろって請負契約が成立します。建設工事の請負契約は法定事項を書面にして相互に交付する必要があるため(出典: 建設業法第19条)、注文書だけでなく請書も受け取り、双方向で保管することが基本です。
Q2. 注文書・注文請書だけで工事請負契約は成立しますか?
注文書(申込)と注文請書(承諾)がそろえば契約は成立します。ただし建設業法は請負契約に一定の記載事項の書面交付を求めており、実務では基本契約書に法第19条第1項各号の事項を記載し、個別の注文書・請書と組み合わせて運用する方法が一般的です(出典: 国土交通省「建設業法第19条関係」)。
Q3. 契約書面は工事の着工前に交付しなければなりませんか?
原則として工事の着工前に交付する必要があります。契約書面の交付は、災害時などやむを得ない場合を除き、着工前に行うこととされています(出典: 国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン(元請負人と下請負人の関係に係る留意点)」)。
Q4. 注文請書に収入印紙は必要ですか?
注文請書は印紙税法上の第2号文書(請負に関する契約書)にあたり、記載金額に応じた収入印紙が必要です。契約金額の記載がないものは200円、1万円未満は非課税です(出典: 国税庁「No.7102 請負に関する契約書」)。建設工事の請負契約書は、100万円超で令和9年3月31日まで軽減措置の対象です(出典: 国税庁「No.7108」)。
Q5. 注文書のほうに収入印紙は必要ですか?
一般に、契約の申込にすぎない注文書は課税文書に当たらず収入印紙は不要です。ただし、注文書に相手方の申込みに対する承諾の事実が記載されているなど、実質的に契約の成立を証する内容であれば第2号文書として課税されることがあります(出典: 国税庁「No.7102 請負に関する契約書」)。書面の実質で判断される点に注意してください。
Q6. 電子契約にすれば収入印紙はかからないのですか?
印紙税は紙の課税文書に課されるため、電磁的措置による電子契約で作成した注文請書には収入印紙が不要と一般に整理されています。建設工事の請負契約は、所定の要件を満たせば電子契約で締結できます(出典: 国土交通省「電磁的措置による建設工事の請負契約の締結に係るガイドライン」令和7年9月30日)。ただし電子化の可否は取引先との合意や社内体制もふまえて判断してください。
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